タイトルフォト

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スーダン南部、難民キャンプの風景と子ヤギの世話をする男の子(photo by Frank Keillor)

2014年10月9日木曜日

スーダンに井戸を贈ったアメリカの高校生、岩子ゆりえさんに聞く(2014年9月)

岩子ゆりえ
日本(福山)で生まれ、二歳のときに両親とともにアメリカに渡る。高校時代にロストボーイズと出会い、衝撃を受けて学校でボランティア活動を始める。その活動で資金を集め、南スーダンに井戸を提供した。2014年、カリフォルニア大学バークレー校を卒業。


岩子ゆりえさんインタビュー

葉っぱの坑夫:まずどんな風にしてこの本の著者たちと出会ったのか、教えてください。

岩子:新聞でロストボーイズのことは読んで知っていました。わたしの住んでいたサンディエゴで、カントリー・フェア(毎夏催される地域イベント)があり、彼らが講演をすると聞きました。その年のテーマが「ヒーローをたたえる」だったんです。それでそこに出かけて行き、彼らの話を聞きました。話を聞いてとても心動かされ、講演が終わったあとで勇気を出して彼らのところに行きました。ジュディとベンソンたちに声をかけ、何か自分にできることはないか、訊ねました。

葉っぱの坑夫:ロストボーイズたちに会って、どんな印象をもちましたか? そのとき本はもう読んでいたのでしょうか。

岩子:最初に会って感じたのは、とても勇敢に見えたことと、また謙虚な人であることでした。会ったときはまだ、本を読んでいませんでしたが、南スーダンで起きた内戦や集団虐殺のせいで、スーダンの人々が、大変困難な状況にあることは知っていました。彼らの状況に衝撃を受けていました。

葉っぱの坑夫:この本を読んでどう感じたか、教えてください。いちばん心動かされた部分はどこでしょう。

岩子:彼らの本はわたしの生き方を大きく変えました。わたし自身、生きていく上での困難がたくさんありました。もちろん、彼らの困難と比べられるものではありませんが。この本はわたしに、究極の感動を、強い衝撃を与えました。人が生きることにおいて何が重要か、わたしに教えてくれました。同時に、自分がいかに恵まれているかに気づき、感謝しました。いちばん印象的だったのは、彼らの強さです。いかに困難なことに出会おうと、いつも戦い、前に進みつづけたこと、それも自分たちだけで、手を引いてくれる親もなしで、です。飢えに苦しみ、親兄弟を失っても、教育を受けようと努力し、途中であきらめませんでした。教育が自分たちをもっと先へと導いてくれると、彼らは知っていました。そしてだからこそ、彼らは自分たちの経験を、世界中の人々と分ち合おうとしてきたのです。

葉っぱの坑夫:岩子さんは高校生のとき、南スーダンに井戸をつくるプロジェクトを始めました。なぜそうしようとしたのか、プロジェクトはどんなものだったのでしょう。学校の仲間といっしょにやったのでしょうか?

岩子:この本の著者たちに、今スーダンで何が必要か、何が求められているのかを訊いて、井戸をつくるプロジェクトを始めました。彼らが言うには、教育はスーダンの子どもたちにとっていちばん大事なもの、でもその前に、生きるために基本的なものがある、それは水だ、と。スーダンでは、子どもたち、中でも女の子たちは、教育の機会を失っていて、それは毎日生きるために水を運ぶのに忙しいからだ、と言うのです。それにその水は清潔で安全な水ではありません。水を運ぶために教育が受けられないだけでなく、水を飲んで病気になっているのです。わたしの活動では、学校での報告会を通して、お金を集めみんなの認識を高めようとしました。資金集めのイベントもしました。わたしのやっていたクラブ「スーダンを救おう(the Save Sudan club)」は、学校の仲間で構成され、ジュディ・バーンスタイン(ロストボーイズの相談役)も井戸づくりを果たすために、惜しみない手助けをしてくれました。

葉っぱの坑夫:ロストボーイズと同じように、あなたもアメリカでの移民になりますね。アメリカで移民であることはどういうことなのか、話してもらえますか? アメリカは世界中から移民を受け入れています。アメリカ政府がこれまでやってきたことについて、何か思うところはありますか?

岩子:アメリカで移民であることは、とても困難がともないます。わたしの両親は、慣れ親しんだものすべてを日本に置いて、アメリカにやって来て、全く新しい生活を始めました。移民として暮らすというのは、何か困ったことがあったとき助けてくれる親戚や友人知人がいない、ということ。またわたしの両親はアメリカに来たばかりで、資産や資本を代々かけて蓄積する時間もありませんでした。多くのアメリカ人がやってきたようにはいきません。つまり貯蓄もなく、もし家族に何か起きたときも、何の保証もないのです。それはまさに、わたしの父ががんで倒れ死んだ理由であり、そのあと、家族が大変な経済的困難に襲われた理由でもあります。現在のアメリカの移民の状況はとても複雑であり、わたしが賛成できるようなものでもありません。それは移民制度そのものが本質的に公平を欠いたもので、移民にはお金がかかり、また非常に手間も時間もかかる手続きが必要とされます。それは多くの人を排除するもので、不法入国を余儀なくさせてしまうのです。これにより、多大な人権損害の環境が生まれます。難民の中に恩赦を与えられる人がいるのは、いいことだとわたしは信じていますが、一方で南米からやって来る経済難民のことはあまり考慮されていません。それと同時に、戦争で家を離れた難民たちのことも、考慮されていません。アメリカは戦争関連のことで使っている大量のお金について、もっとよく考える必要があると思います。そして戦争に使おうとしているお金を、彼らがアメリカに来れるよう手を貸したり、あるいは経済難民が経済を立て直し、自分の国にいられるような援助をするべきだと思います。彼らはそれで救われ、またアメリカも、そして世界も救われるのではないかと思います。

*このインタビューは2014年9月に、メールで行なわれました。原文は英語です。

2014年10月4日土曜日

この本に寄せられた感想(4)

ジュディへ

ミシガン州立大学(MSU)の新入生です。夏の休暇の間にこの本を読んでおくように言われて、正直苦痛でした。でもひとたび読み始めると、書いてあることにぐいぐい引き寄せられました。わたしはMSUの芸術・人文カレッジで、他の国の文化や物語を学ぶことになっています。両親が経営するパーティストアでアルバイトをしていて、休憩のときにこの本を読んでいましたが、ときに裏の冷蔵室に入ってこっそり続きを読んだりもしました。本を閉じることができなかったのです。今朝本を読み終えて、今彼らがどうしているか、ネットに飛びつきました。この夏のMSUのキックオフイベントに、あなたたちが講演に来ると知って興奮しています。

この本を読んでいちばん得たことは、希望を与えられたことです。自分のまわりには、もっと大きな世界が広がっていることを、この本は教えてくれました。わたしくらいの年齢の若者が手にするよりも、もっと世界の現実を知ることができたと思います。他の人を助ける道を歩く、というインスピレーションを与えられました。自分が他の人を助けたいということはわかっていましたが、その方法がわかりませんでした。今、わたしは自分の未来がどんな風かと思い悩むのではなく、他の人を助けることで、自分の未来がどうなるか、それを考えます。

ロストボーイズの話はわたしの目を、心を開いてくれました。ほんの少し手を差しのべることが、他の人の暮らしに大きな違いを生むことがわかりました。今、わたしは100%の気持ちで、他の人の暮らしを変えることに関わりたいと思っています。流れのきつい川で、一晩中水に浸かって、何千人もの子どもたちを向こう岸に渡した、スーダンの先生のような存在になりたいです。


アマンダ・S

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ジュディさんへ

わたしはフィラデルフィアにあるJ.R.マスターマンの7年生です。英語の授業で、アミット先生とこの本を読んでいます。わたし自身は、本全部をもう読み終わりました。クラスではスーダンやスーダンの内戦について、調べて学んでいます。この本はとても悲しいと同時に、目を開かされるものでした。わたしの家族は、全員をこの本を買いました。そして毎晩、それぞれそれを読んでいます。わたしのパパはベナン出身、ママはナイジェリア出身です。両方の国に、わたしは行ったことがあります。この本は素晴らしい本だと思います。これを書いてくれて、とても感謝しています。


エミリー

2014年9月12日金曜日

この本に寄せられた感想(3)

前回はオハイオの中学一年生からの手紙を紹介しました。今回はアラスカの先住民トリンギットの少年と、学校の授業でこの本を読んでいる大学生からの手紙です。
(この本の著者たちは、アメリカの各地をスーダンのこと、ロストボーイズのことを伝える旅を続けています。本を書くことと同じように、こうして人々の前で体験を話すことが重要だと思っているのです。本を読んだ人、学校で副読本として手にした人、会って話を聞きたいと思っている人たちから著者の元にたくさんのメールや手紙が届いています。その一部を紹介します)

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こんにちは、ジュディ

ぼくは今、大学の政治学のクラスで必読書になっているこの本を読んでいるところです。こんな風に、本が自分の心を動かすとは、考えたことがありませんでした。まだ読んでいる途中なのですが。

本といっしょに、ぼくはオーディオブックも買いました。通学のときに聞こうと思ったからです。ときに聞くのをやめようか、と思うことがあります。それは学校に着いても、車を降りたくなくなることがあるからです。車を止めたまま、聞き入ってしまうこともしばしばです。

読んでいないときも、この本のことが頭から離れません。夜眠りにつくまで、忘れることがありません。

ベンジャミンとデン兄弟に、彼らの苦難の体験を話してくれて、世界の多くの人が気づいていない真実を明らかにしてくれて、ありがとうと伝えてください。三人が豊かな暮らしを営めるよう願っています。

ティム・L


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ジュディへ(アラスカ州ジュノーに、ベンジャミンとベンソンを迎えて)

ベンジャミンとベンソンをお迎えする役をいいつかって、とても光栄に思いました。話を聞いてすぐに、本を読みはじめました。とても胸を打たれました。本に書かれていることが、本当に起こったとは、今も信じられません。彼らの物語を読み、その後彼らをこちらに招いて、この手で抱きしめることができたのは、なんと素晴らしいことだったでしょう。これこそが人生の意味ですね。彼らを招く手伝いをしていただき、ありがとうございました。あの朝のことを思い浮かべるだけで、涙が出てきます。彼らの話を聞いて、強さというものをこの手にしました。一生僕の心に留めたいです。

来ていただいたときに僕らがうたった歌は、哀悼歌です。だからあの歌をうたうことで、僕らはロストボーイズのことを悲しみ、悼みました。映画監督のジョー・ライトがトリンギットで虐殺が起きたのを知って、作られた曲です。トリンギットの人間として、彼らの物語は自分のことのように感じました。ベンソンとベンジャミンに、いつも彼らのことを想っている、感謝していると伝えてください。ありがとう。あなたたちのことをずっと思いつづけます。

リッキー・T


2014年8月25日月曜日

この本に寄せられた感想(2)

前回はカリフォルニアの高校生から届いた手紙を紹介しました。今回はオハイオの中学一年生からの手紙です。
(この本の著者たちは、アメリカの各地をスーダンのこと、ロストボーイズのことを伝える旅を続けています。本を書くことと同じように、こうして人々の前で体験を話すことが重要だと思っているのです。本を読んだ人、学校で副読本として手にした人、会って話を聞きたいと思っている人たちから著者の元にたくさんのメールや手紙が届いています。その一部を紹介します)

ジュディへ

ぼくはオハイオに住む七年生です。ずっとオハイオで育ち、居心地のいい家に住み、たくさんの食べものに囲まれ、両親も元気で、妹や姉さんがいて、弟もいます。住んでいる場所もいい環境です。ロストボーイズがまだ村にいた頃と、今のぼくは変わらないのではと思います。ぼくの国も過激派の人に襲撃されました。ベンジャミンがアメリカに着いたその日、彼らの襲撃は大きな成功をあげました。ぼくはロストボーイズたちが、支援をもとめてぼくの国にやってきたことを誇りに思います。襲撃のとき、ぼくらがスーダンに行って、助けることができなかったことを恥ずかしく、残念に思っています。世界のどこかでこういう事件は起こっていて、でもそれに手を貸そうとする人はあまりに少ないのでは、と想像します。ぼくらが資源をもっているのは知っているし、それをもっと分けた方がいいのにと感じます。

実際に起きたことについての本をあまり読んだことがありませんでした。歴史をあまり勉強してないし、今起きていることにも、あまり関心をもってこなかった。この本を読んだあと、ぼくは自分の知識を増やし、そういうことに注意をもっと向けようと意欲を燃やしています。

あなたが最初、ロストボーイズたちの相談役になることにためらいがあった、と正直に言っているのに感動しました。もしぼくの学校にロストボーイズが来たとして、一番に近づいていって話しかける勇気がぼくにはない、と思います。なんてバカで自己中心的なんでしょう。三人のロストボーイズが語る物語に対して、あなたが書いた最初の紹介文は、はじめの言葉として、これ以上ないものだと思います。ぼくは読み進むうちに、少しずつ、彼ら三人が何をどう体験したのか、感じ、耳を澄まし、考えと学んでいきました。彼らの話を集めてぼくに読ませてくれたあなたに、感謝します。

だれも聞いたことがないような彼らの勇気に、おおいに刺激を受けました。この世界で解決されていない他の問題についても、ぼくはもっと知りたいと思います。そしていつか、飢えて、からだが弱った子どもたちにとって、この世界がもっといい場所になるように、手を貸す勇気をもてたならと強く思います。「二頭のゾウが戦うとき、踏みつけにされるのは草だ」 こういうことわざにも、もっと関心をもち、その言葉の裏に、どんな体験が隠されているのか、気づくようにしようと思います。過激派の人たちだけが非難を受ければいいわけじゃない、そう思います。

パット

2014年8月9日土曜日

この本に寄せられた感想

この本の著者たちは、アメリカの各地をスーダンのこと、ロストボーイズのことを伝える旅を続けています。本を書くことと同じように、こうして人々の前で体験を話すことが重要だと思っているようです。
本を読んだ人、学校で副読本として手にした人、会って話を聞きたいと思っている人たちから著者の元にたくさんのメールや手紙が届いているそうです。
その中からいくつか紹介していきたいと思います。


●まず、カリフォルニア州サンペドロ高校の生徒からのメールを紹介します。

バーンスタインさんへ

この本を読むまで、わたしは本を読むのが嫌いでした。正直いって、本なんてと思っていました。アレフォやベンソン、そしてあなたが書いたものがしたみたいに、本が自分に何か訴えかけるなんて思ったことがなかったのです。いま自分が手にしている自由や、本を読むことや、教育が受けられることが当然だ、などともう思うことはないでしょう。あなたたちに出会ったことで、わたしの人生は言葉にできないくらい変わりました。わたしがこれまで会った中で、あなたたちは一番楽天的な人だと思います。どうやったらそうなれるのでしょう。そうやって前向きに生きられるのは何故でしょう。本を読み進むうちに、自分がどれほど運に恵まれているか、恵まれていたか、よくわかりました。

本もののヒーローとは何か、その考えが変わってしまいました。今までは警官とか消防士がヒーローだと思ってました。でも本もののヒーローというのは、分け隔てなく人に親切にすることを気づかせてくれる人なんだ、とわかりました。それはあなたたちが、わたしにしてくれたことそのものです。ベンジャミン、あなたはわたしのヒーローです。あなたはこの本の、そしてこの世の闇に輝く本もののヒーローです。誰も教えてくれなかったことを、わたしに伝えてくれて、ありがとう。前向きに考えることが大きな違いを生むことを教えてくれて、ありがとう。そしてとりわけ、良い人間になることを、誰にも親切にすることが大事だと気づかせてくれて、とても感謝しています。


サンペドロ高校 ノエル・P

2014年7月15日火曜日


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空から火の玉が・・・(南スーダンのロストボーイズ 1987 - 2001)
著者:ベンソン・デン、アレフォンシオン・デン、ベンジャミン・アジャク、ジュディ・バーンスタイン
だいこくかずえ訳
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*葉っぱの坑夫サイト(上記の紹介ページ)で、本文各章からの抜粋が読めます。
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